登山者情報986号

【2006年03月05日/町境:鍋越山/井上邦彦調査】

参加者:JF7HZU・JG7QVH・JM7NIY

 04:55QVHの自宅に迎えに行くが、建物の中は真っ暗、何回か携帯電話で呼び出すが応答がない。暫く待った後に諦めて出発すると、携帯電話が鳴った。寝坊をしたとのこと、もう一度迎えに戻り、再出発する。
 途中、無線でNIYを呼ぶと既に集合場所で待機しているとのこと。上岩倉集落の除雪終点に車を置き、準備をして06:37歩き始める。
 スノーシェット内はスキーを脱いで通過、07:05橋を渡って黒滝沢に入る。近くの樹木に見事なスズメバチの巣があった。07:09-22食事とする。放射冷却のせいでスキーを脱いでも潜らない。
 林道を進むと、ウサギの毛と血痕があり、沢山の動物の足跡があった。足跡から推測すると、林道を歩いていたウサギにテンが飛び掛り、暴れるウサギを振り回して7m程引きずり本流に持って行ったようである。カモシカの跡もやたらと多い。
 07:44林道終点に着く。ここから尾根筋を登ることにする。右手は杉林、雑木林の尾根を詰めるがシールはあまり効かない。
 08:32-43(750m)、平坦な尾根上に出ると、懸案の923m峰と山毛欅潰山が見えた。広い尾根を右寄りに進み、09:02に844m峰北のブナ林が続く尾根上に出る。飯豊山が頭を出し大沢の源頭部を覗き込む。雪面に砕かれたガラスが一面敷き詰められ輝いている。よく見ると、樹木から飛ばされた氷が突き刺さっていた。
 09:14、900m峰で町境となる。ここで923m峰のルートを観察しながら登攀用具を身につけアイゼンを履いた。2週間前と比べると柴の面積が大きくなり、山頂直下の雪庇が小さくなり、手前の痩せ尾根が嫌らしさを増しているようである。
 HZUがトップ、NIYがミッテル、QVHがラストを取ることにした。コンテで痩せ尾根を進み、岩が出てきた所の松を支点にしてスタカットに切り替えた。雪庇崩壊の恐れがない限り問題はないが、スキーを背負っているので邪魔くさい。数箇所ランニングビレイを取って50mロープが一杯になった所で1ピッチ終了。NIYにはプルージックで登ってもらった。
 雪庇が右に出ている茸雪なので1ピッチは左の寄りに進み、2ピッチ目は雪庇が崩れ落ちているので雪塊の右を通り、藪斜面に出た。藪斜面は思ったより傾斜が緩く楽に登れた。ロープがなくなった所で潅木に支点を取り、ピッチを切った。ロープを固定さえしてしまえばNIYが勝手に登ってくるので、のんびりと峰々を眺める。暖かくで気持ちが良い。
 3ピッチ目は雪庇越えである。雪庇下の潅木にランニングビレイを取る。雪庇は2段になっており。垂れ下がったような下の雪塊と上の雪庇の間には亀裂が入っている。恐る恐る下の雪塊に足を乗せ、上の雪庇にピッケルを刺すが思うように効いてくれない。完全に体重を下の雪塊に加重し背伸びして差し込んだピッケルを頼りに、強引に雪庇を越える。
 一息つくと雪稜があり、念のため松の木にランニングビレイポイントにして、もう一度雪庇を越える。こちらはピッケルと腕で雪庇を壊して越えた。山頂の松にロープを固定してザックを降ろしNIYを待つ。声が通らないので散歩がてら山頂をうろうろする。飯豊山は元より北股岳も見えた。栂峰・蔵王連峰・朝日連峰・飯豊連峰の展望を見ながらのんびりする。NIYにQVHの確保を頼み、QVHが最後の雪庇を越える写真を撮ろうとしてQVHに声を掛けた瞬間、QVHの姿が消えた。足元が崩れたらしい、顔中を雪だらけにしてにこにこしながらQVHが登ってきた。
 11:40-12:20、923m山頂で登攀用具を片付け、スキーを履いて下降を始める。尾根筋は話にならないので、右側の斜面を下るが、硬い層に10cm程度の雪が張り付いており、エッジが全く効かない。ずり落ちるスキーを木に当ててストップし、スキーを両手に持って尾根筋に出る。そのまま尾根筋を下ると、鉈目が結構ある。この尾根筋は熊狩りのルートになっているのかも知れない。
 声が聞こえたので振り向くと、QVHが雪崩と共に落下している。強引にスキーで下ろうとして雪崩を誘発してしまったようだ。雪崩は表層だけなので埋まりもせず途中のブナに引っ掛かって止まったようである。暫く休み、平気でこちらに向かってくる。
 鞍部でスキーを履き、雪庇の出ている急な尾根筋を避けて右斜面を登るが、やはり硬い雪の表面に乾燥した雪が付着しておりエッジが立たない。何とかして尾根上に上がるとNIY・QVHともスキーを両手に持ってキックステップで登ってきた。
 883m鞍部には快適に滑り降り、ブナ林を上り右手から巨大な尾根を合わせるが、眼前には雪庇がのしかかる。右の尾根に移り雪庇を越えようとするが、ここもやはり傾斜が切り立っている。スキーを両手に持ってぎりぎりまで登り、スキーを頭上の雪面に上げて力任せに上り、後続者のスキーは手渡しで上げる。
 13:29小峰を通過して進む。尾根が極端に痩せているが傾斜はないので構わず潅木を掴みながら中を進むと、カモシカが亀裂に落ちた大きな穴があった。
 ブナ林を登り切る。14:11-28、1,069m峰で正面の横向き・鍋越山・オオザカイ尾根の展望を眺める。これからの長い行程を考え、ここで各自の自宅に「帰宅が遅くなる」旨の電話を入れる。
 横向きは登るほどに傾斜がきつくなるが、そのままスキーで登れた。14:52横向き山頂、滝から来る尾根と合流した山頂の風紋が美しかった。飯豊山を眺めながら呆然とする。
 緩く下る途中、振り向くと最後の登りに取りかかっている2人が見えた。ブナの林を黙々と登る。風の影響なのか、階段状に傾斜が変化する。途中でまたも表層だけが滑り始めたので、スキーにカラビナとテープを掛けて曳き、キックステップで登る。
 15:40-14:07鍋越山々頂。ここまで来ると見慣れた飯豊連峰の光景が広がる。地蔵岳から種蒔山、剣ヶ峰と三国小屋、草履塚、飯豊山、ダイグラ尾根・・・懐かしさに溢れている。缶ビールを雪に埋めて後続の2人を待ち、大展望を楽しむ。
 雪庇の安全を確かめて下降を開始する。この先は登りも待っているのでシールを外すわけには行かない。シールをつけていると変な所でブレーキがかかり転びそうになるので、無理をせずキックターンと斜滑降の繰り返しで下り、下部の安全が確認できた所は直滑降とする。できれば尾根脇の斜面を下りたいのだが、例によってガリガリの雪面に乾いた雪層があり滑落しそうなので忠実に尾根を辿る。
 NIYは相変わらず八の字滑降である。なおNIYだけ兼用靴を履いき、2人はプラブーである。QVHは足の疲労が溜まっているらしく転倒を繰り返している。
 17:35、1,030mで左に大きな尾根を分ける。ここから大沢の林道に向けて下ることも考えたが、時間が遅くなっているので安全策として計画通り主尾根を下った。
 程なく尾根は痩せた急斜面になった。スキーを担いで下ることとした。硬い雪面でキックステップが必要な所もあるので、坪足で下る。
 18:05暗くなってきたのでヘッドランプを点灯するが、基本的にはライトを消して歩く。ライトを点けると尾根の全体像が分からない。次第に暗くなり、足元の雪面が分からなくなるので、点けたり消したりを繰り返す。右下の沢筋に光が2箇所見えた。建物は民宿惣兵衛と釣堀くらいである。
 雪がざけ、ワカンジキが欲しくなる。これだけ暗くなるとスキーは危険である。杉林に入り暫く下ったところでコースを確認する。2人はワカンジキに履き替え主尾根を下ることを主張するが、私は敢えて枝尾根を下ることを主張した。沢に降らない限り、このまま尾根を歩くより早く車道に出てスキーに履き替えたほうが良い。
 19:15主尾根を外し、左の尾根を降る。左下の沢筋に建物らしいものが2軒見えたので山田さんの家だろうと見当をつけ、尾根から外れ斜面を真直ぐに下る。樹木の周辺は横に亀裂が走っている箇所が多く、足を取られて2度転倒する。ザックに付けたスキーが腰の下に出ているので急な雪面に触れてバランスを崩すのだ。転倒すると足が腿まで埋没し、動けなくなる。何とか足を掘り出して降る。
 眼下に黒い四角が2箇所見えた。明らかに人工物であり、釣堀の池だと気付いた。思ったより上流部に出たことになる。すると先ほどの灯りは何だったのだろうか。考えられるのはキャンプ場のある砂防ダムか?
 19:35釣堀に到着する。スキーに履き替える。私はすぐにシールを外した。雪は硬くスキーが良く滑る。シールを外さない2人との距離が開く、途中で2人もシールを外す。私のヘッドランプの電池がなくなってきた。先ほどGPSに雨蓋の予備電池を使っているので、更なる予備電池はザックの奥にある。空の一部に星が出ているので、ヘッドランプなしで進む。スノーモービルの跡が続いている。
 20:31黒滝沢を通過し、21:18ようやく上岩倉に到着した。

今回のコース

画像