登山者情報995号

【2006年04月30日/石転ビ沢/井上邦彦調査】】

 連休前になり、飯豊連峰の様子について問い合わせが増えてきた。公園管理人の舟山堅一さんから「雪崩の状況はかなり悪い」との電話をいただいているが、直接自分の眼と肌で感じなくては回答できない。
 当初は29日に予定したが、用事ができたので30日に石転ビ沢を目指すこととした。状況によっては渡渉や倉手山経由も視野に入れ、走ることができるように熊狩りで履き慣れたスパイク長靴、荷物は最低限にした。また役場担当者から除雪を始めたとの情報を入手したので、自転車を準備した。
 林道分岐の大淵に着くと登山者が2人準備をしていた。尋ねると同じコースである。林道入口には車が入れないように除雪車が止められている。
 04:52自転車に乗り大渕を出発する。すぐに除雪の終点となり、04:57自転車を雪の上にデポして歩き出した。官民境(国有林入口)から雪崩の危険地帯となる。砂防ダム右岸の雪は盛り上がり今にも崩れそうだが、これで怖がっていては話にならない。そそくさと危険地帯を突破し、08:21オフタガリ沢対岸に着く。
 オフタガリ沢からの巨大な雪崩跡が玉川を塞いでいる。この先が核心部である。見上げると何時落ちてくるか分からない雪が続いている。ピッケルを出し、上部と足元に神経を集中させ、一気にトラバースする。吹き付けは路肩が出ておりひと安心するが、スラブ状の小沢は見えない場所から雪塊が落ちて来る可能性がある。上方を確認して小走りに抜ける。
 吹き付け通過後も油断はできない。忘れられたような所に嫌らしく雪が張り付いているのが今年の特徴である。雪塊が落ちてきたと同時に走れる集中力と素早い通過が勝負の分かれ道である。
 昨年路肩が崩壊した部分は、さらに傷んでいた。ブナの平地に入りようやく安心する。05:50天狗橋袂の水場はまだ埋もれていた。橋を渡りそのまま直上し、天狗平ロッジの様子をチェックする。今年度から天狗平ロッジは私達が管理することになっている。玄関の雪囲いが壊れ、ドアのガラスが割れていた
 05:58飯豊山荘を通過する。丸森尾根取り付きは夏道が出ている。温身平のブナ林はまだ冬の様相である。06:33-43砂防ダムで食事を取る。階段は露出している。ダムの土砂堆積が進んでいると感じた。
 ブナ林を進み、例年のスノーブリッジを目指す。するとその上流が塞がっている。ともあれ右岸に渡り下ツブテ石を向かう。07:02なんと下ツブテ石が雪に埋まっている。このような光景は記憶にない。先ほどのスノーブリッジと下ツブテ石の間には流れが露出している所もある。
 上ツブテ石は先端のみが露出しているが、沢は雪渓で覆われている。それでもそうそうに左岸に移り左岸寄りに進み、地竹原で広い雪原に出る。滝沢出合を除くと、狭くなっている部分の雪渓に亀裂が確認された。雪渓なりに右折すると正面に梶川が伸びている。
 07:23梶川出合を通過する。すぐ上流左岸の水場は使用できる。雪渓上ではここ以外に近づける水場はない。
 07:44-59石転ビノ出合に到着する。何時もは見える筈の梅花皮小屋・門内小屋ともに見えない。左岸の岸壁についている雪が垂れ下がっているように見える。誰かが昨日登ったようなトレースが続いている。平坦になった雪崩跡も近づくと雪塊が歩きにくい。新雪が出てくると、雪塊の間の隙間が隠されており、落とし穴のようになっている。
 08:50ホン石転ビ沢出合を通過する。ここから足跡は左岸寄りに登っているが、嫌らしい気持ちがして右岸寄りにルートを取る。次第に雪が潜るようになってきた。一歩一歩高度を稼ぐ。左岸壁から2度ほど落石がある。走りにくいので、落石を避けるためさらに右岸寄りにルートを選ぶ。鈍い音に振り向くと左岸壁に張り付いていた雪が崩壊しており、次々と雪塊が雪渓に転がり落ちていく。観察すると壁一面に張り付いていた雪の中心部のみ相当面積が剥がれ落ちている。このようなブロック雪崩は珍しい。よく見ると近くにも同じように剥がれている場所があり、やはり今年の雪崩は例年の常識が通用しないようである。
 09:25-33北股沢出合右岸で食事を取る。何時もなら北股沢との分岐尾根末端で休むのだが、今回は北股岳の雪庇が気になったので右岸にルートを取った。20〜30cm潜るのでゆっくりと斜登する。上を見上げていると、山頂付近で表層雪崩が発生し、見ている間に登山者のトレースを覆い隠した。
 10:21疲れを感じ始めた頃、小屋が見えた。10:30梅花皮小屋に到着する。大日岳が見えている。本棟の1階入口が僅かに開いており、風除室一杯に雪が吹き込んでいる。梯子を登って冬期出入口から入る。小屋内部に異常はないようだ。ただ風除室にびっしり雪が詰まっているため、中からも戸が開けられない。
 今度は管理棟に向かうと、昨年同様扉が凍り付いている。雪を取り除き、扉を叩き少しずつ隙間を広げて中に入り除雪を行い、10:49管理棟に入る。自宅とメールでやり取りし、無線で呼ぶとODDが応えてくれた。水場の様子を見に行くが、水は何処にも出ていなかった。管理棟でラーメンを肴に缶ビールを飲む。
 11:53梅花皮小屋を出発する。北股沢出合上で、今朝ほど一緒になった秋田の2人が登ってきた。写真を撮っていただき、下山。12:10北股沢出合を通過する。下りは一段と潜り頻繁に長靴に雪が入る。
 12:19ホン石転ビ沢出合を通過する。新しい雪崩跡があった。12:34-40石転ビノ出合左岸は雪崩の巣になっている。12:52梶川出合、13:23-29砂防ダムで食事とする。
 14:09飯豊山荘を通過する。この先、緊張しながら往路を戻る。安全地帯に入ってほっとした14:59-04倉手山登山口で細川さん一行にお会いする。倉手山を登ってきたとのことである。
 15:12自転車に乗り、15:16大淵に帰着した。

今回のコース(□まで除雪済み)
下ツブテ石から滝沢へのルート

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