会員の山行 146号

【2009年04月06〜08日/八ヶ岳(阿弥陀岳、旭岳)/吉田岳(文)・今野伸(写真)】

 時間ができたため、話題のETCを利用してWKBと八ヶ岳山行を計画した。7日(日)早朝に出発する予定だったが、石転び山行http://www.iideasahi.jp/1229.htmがビバークとなったため、結局夕方の出発となった。予定を変更して美濃戸口に向かい、10時に林道脇の待避所を見つけここでビバーク。サクッとお酒を飲んで、車内で就寝。
〔8日 阿弥陀岳北西稜〕                                      
 4時起床の後、再び車で美濃戸へ移動。準備を行い、5時50分出発。行者小屋への登山道を歩くが、道が凍っていて歩きにくい。途中から阿弥陀岳が顔を出した。急峻な稜線にゾクゾクさせられる。7時30分、北西稜への取り付きと思われるところに到着。新雪をラッセルした踏み跡が残っており、非常にありがたい。急な樹林帯を登っていく。更に草付き、リッジ、雪壁を登っていき、小ピークに到着した。                                          ここで登攀道具を身に付け、アンザイレンを開始した。1ピッチで正面岩稜のテラスに到着。まずは簡単な草付きフェース。次は右に巻くルートを無視し、カムを使い正面突破。更に凹状岩壁からリッジへと繋ぐ。ここまでは順調、快適なクライミングを楽しんだ。最後の岩場は左の巻き道から尾根に抜ける方法もあるようだが、今回はきちんとルートを制覇しようと決め、右のW+クラック壁に向かった。バイルを背中に刺してクライミングモードで望むが、アイゼンが掛かる足場が乏しくさすがに厳しい。残置カム(回収できなかったのだろう)に助けられ、中間まで来た所で痛恨のミスを犯す。「カラン、カラーン・・」。バイルを落としてしまったのである。きちんとホールダーに差せば良かった(もしくは井上方式)と反省。どうするかテンションをもらいながら考えた末、帰りに回収することにして、再び登り出した。何とか登り切り、ビレー。WKBもロープにしがみつきながらも登ってくることができた。その後もアンザイレンで稜線を登り、11時10分阿弥陀岳に到着。風も無くほとんど快晴。視界の中に人がいる気配はない。4月の八ヶ岳がこんなに快適とは知らなかった。                            名残惜しいが、バイル回収作業があるため北西稜下山に入る。ほんとは文三朗道もしきは北稜下山であったのだが、WKBには申し訳ない。ただこれもいいトレーニングと、都合の良い言い訳をつけた。アンザイレン、懸垂下降を組み合わせ、バイルを回収。更にロープで小ピークまで下降した所で、ロープを閉まった。だいぶ時間をロスしたが、16時、美濃戸に無事到着した。
車で下界に降り、温泉(もみの湯)に浸かり、小淵沢へと向かう。しかし、時間が遅くなり、食料もうまく買い込めず、更には車のガソリンも危なくなってきたため、登山口までは行けずに清里の空き地にてまたもやビバーク。WKBはこれで3日連続のビバークである。
〔9日 出合小屋 権現沢左俣〕                                
 今日は結局休養も兼ねて、出合小屋までの移動と、周辺探査、更に残っていれば氷瀑遊びを行おうということに決まった。ゆっくりめに起き、準備を行い、コンビニで朝食をいただき、更に給油をしてから、登山口の美し森へと向かった。車をここに置き、2泊分の食料を持ち、林道を歩く。地元の山岳会が整備を行なってくれているようで、道は思ったより歩きやすかった。3時間ほどで出合小屋に到着。休憩の後、登攀道具を持って周辺の散策に向かう。明日取り付く尾根を探しているとガイドの遠藤晴行氏と出会い、軽く言葉を交わす。                                              時間があるので、遊べそうな氷瀑を求めて権現沢を登っていった。本流の大きな氷瀑は雪崩で埋まっていたが、枝沢でいくつか登れそうな氷瀑やルンゼが残っていた。早速、1つ目の垂壁氷瀑でボルダリング。続いてロープを出し、細くて急なルンゼに取り付いた。最初の雪混じりの斜面はピッケルワークの練習になり、そして最後はちょっとしたバーチカルも体験。WKBにはそれなりに良い練習場である。スクリューを持ってこなかったが、初めて使うアイスフックを試し、60mロープのちょうど半分で終点。降ろしてもらい、WKBとチェンジ。WKBは2度ほど落ちるも、何とかクリア。懸垂で降りてきてもらう。ついつい遊びすぎてしまったが、撤収を行い小屋に向かった。
〔10日 旭岳東稜〕                                         4時過ぎに起床し、朝食の準備を行う。今日も天気は晴れ。顔のヒリヒリがまた進みそうだ。5時50分出発。6時10分東稜取付き通過。踏み後あり。まずはシラビソ林のアルバイト。初めは軽快だったが、気温の上昇と共にペースが落ちていく。6時50分、旭岳・権現岳の豪快な東斜面が目の前に現れた。やせ尾根の岩場が出てきたためロープを出すが、尾根の反対側に楽に歩けるルートを見つけ、ロープを仕舞い直してもらう。再び樹林帯のきつい登りが続く。途中テントを張った後があり、トレースはそこで終わっていた。ここから引き返したようである。8時40分、上部岩稜帯下の雪面に出る。登ってみると雪の状態が良くなく、雪崩が心配な感じである。潅木の出ている近くにルートを取るようWKBに声をかける。                                 
 9時30分、やっと岩稜帯取り付きに到着した。ロープを出し、登攀の準備にかかる。ここも左側の潅木斜面のやさしいルートが使われるようであるが、天気や雪の条件もいいので正面の岩稜通しに登ることにした。すぐさま、落としていったのであろうダイニーマスリングとカラビナをゲット。(有効利用させていただきます)。意外と浮石が多い。雪と岩と潅木のごちゃ混ぜ尾根だが、バイルのピックが凍った草付きに効いてくれるのがありがたい。更に高度感のある雪稜を通り、大岩を左側から越えると、山頂は目の前。ロープを解き、WKBに先に山頂へ行ってもらう。11時30分、旭岳登頂。登ってきたルートを見下ろしながら満足感に浸る。やはり登山客がいる気配はなく、八ヶ岳を独占している感じである。                                          休憩の後下山を始める。当初上ノ権現沢を下降して氷瀑遊びをする予定でいたが、雪崩が起きており、とても降りて行けそうではない。一般コースであるツルネ東稜をとりあえず降りていくことにした。目印のテープが所々にあって迷いそうもない。結局途中からも沢に降りて行けず、14時尾根の下まで降りてきた。        小屋の手前で昨日から気になっていた氷瀑があり、時間もあったのでしばしそこで遊ぶことにした。「こんなところ、もしかして初登!??」とか言いながら、まずはAXLがクリア。次にWKBが挑むも、もう1歩の所で氷が剥がれフォール。再度挑むが、力尽き果てリタイア。ただ少し垂壁の登り方を身に付けてくれた感じではある。      
 時間も予定を過ぎたので、急いで小屋に戻って帰り支度。小屋から2時間で美し森駐車場に到着。コンビニでビールを買い込んで小淵沢の道の駅に向かい、ここでお風呂と夕食をいただき、そのまま駐車場で泊まらせてもらう。ちょうど桜の花が咲き、その奥には満月が輝いていた。翌朝4時までに高速に入り、深夜料金で山形へと向かった。

阿弥陀岳北西稜中間部
大同心をバックに
ルートを探す
イエイ!
阿弥陀岳登頂
バイル探してきまーす
林道から南アルプス
出合小屋にて
暑い時はこれ
権現沢左俣
アイスボルダリング
WKBも挑戦
行ってきます
もう少しです
旭東稜をバックに
雪壁を登る
岩稜帯にて
雪稜に出ました
迫力があります
岸壁をクリア
富士山が見えたのですが
旭岳山頂
東稜をバックに
懲りずにまたもや
桜と満月と