登山者情報788号

【2004年02月28日/ウサギダナイ/井上邦彦調査】

小国北部の峰々シリーズが一段落し、南部県境の地図を眺めていると、凹凸が少なく尾根が広く傾斜の緩い山スキーに最適なコースが目に留まった。藤田栄一氏に電話をして情報を集める。天気予報も晴れとは行かないが降水確率は低い。目標をウサギダナイから県境に出た927m峰とした。さらに状況によっては、枯松峰1,119m近くまで足を伸ばして、枯松峰までの可能性を探ってみることとした。
梅花皮荘駐車場に車を止める。今年の飯豊連峰は雪が少ない。俗称自衛隊の岩場から梅花皮荘にかけて岩場となっており、ここをどうクリアするかがポイントである。
高度計を310mにセットし06:32出発する。梅花皮荘前の桜公園に上がって様子を見る。カラッ沢右岸の尾根は急峻で雪崩の巣となっている。カラッ沢左岸も雪崩地形である。カラッ沢に架かるスノーブリッジを渡り、左岸のナラ林に取り付く。途中で行き詰まり、右手にトラバースすると、駐車場上にある鉄製の雪崩止めが連立していた。雪が少ないのをよいことに、雪崩止めの間をトラバースする。一度足が滑ったが、すぐ柴に掴まって事なきを得る。そのまま雪崩止めを斜上し、400m07:03尾根上に出た。ここからは快適な尾根登りとなる。450mゴヨウマツの根元に「夫婦松展望終点」と書かれた標識があった。藤田前梅花皮荘支配人が話していた遊歩道だろう。
490m07:22右から尾根を合わせる。これが自衛隊岩場尾根だろう。山頂に松が生えた丸い山が見えた、452m峰である。ケラの軽快なドラミングが聞こえてくる。510m07:29、452m峰から来る尾根を合わせる。デフを縛る。452m峰と自衛隊岩場尾根の間の沢は広く、下部に杉林が見えた。登って来たコースを下るのはご免である。うまくいけばこの沢から杉林に下れるかもしれない。
鞍部に向けて右斜面を下る。途中シャクナゲの塊が露出していた。鞍部から上はブナ林となる。それほど古い林ではないが、登るにつれて巨樹も出てくる。
530m07:42-47食事。尾根は広くなり、650m08:10左より大きな尾根を合わせる。この付近は何処でも滑れる素晴らしい場所だが、下りはかなり迷いやすい。所々にデフ布を付ける。710m08:22右から尾根を合わせる。とても広く下山には細心の注意が必要だ。08:45松と雪庇のある789mの左脇を通る。広大な雪原になっている。高度計を820mから785mに訂正する。この先は左側に雪庇が出ている。何時も登っている西俣尾根を眺めながら進む。西俣ノ峰から上部は雲で見えない。
810m08:58-09:11食事。840m09:16ピークに立つ。園崎に広い平坦な部分があり、ブナの疎林とマツの群生がある。この辺りが「ウサギダナイ」であろう。ここからの展望は抜群である。正面の927m峰直下は、真っ白な斜面となっており、雪崩の心配もありそうだ。800m09:25鞍部を通過する。ブナ林を抜け、いよいよ急登となる。何度となくストックで雪面を叩き、さらに両手で雪を掘って弱層を確かめる。旧雪の上に約40cmの新雪が積もっていた。
09:44-47新しく購入した工具でスキーのビンディングを直す。910m09:54スキーが異常に沈む箇所があったので周囲をストックで探ると亀裂が現れた。かなり深く大きい亀裂で底は見えない。亀裂が新雪に覆われているのだ。スキーを履いたままでは通過できないので、スキーを脱いで両手に持つ。万一亀裂を踏み抜いた場合は、スキーが落下防止になし、スキーを履いたままで亀裂に入り込んだら身動きが取れないことになる。10mほど坪足で登り、スキーを履くが、すぐにまたスキーでは登れなくなったのでスキーを脱ぎ、坪足で登る。
950m10:04-20小さな雪庇を崩して927m峰(県境)に出る。県境主稜線は風があるので、若干戻って雪庇の下で食事を摂りスキーを直す。ODDと無線が通じた。僅か前にAXLが単独で葡萄鼻山に登頂したとのことであった。
時間を計算して枯松山手前のピークまで進むことにした。合羽上を着て冬用帽子を被る。稜線は東側に雪庇が出ており、西斜面は数m幅で土が露出していた。雪庇は風で出来た凹凸が激しい、雪庇先端は平坦になっているが崩壊が怖い。主稜近くには亀裂の落とし穴が隠れているので油断は出来ない。
途中から西側斜面に移り、900m10:29鞍部を通過する。そのまま西側斜面を進むが、915m10:38スキービンディングの具合が悪いので無理をせず、スキーをデポする。坪足でも雪がクラストして潜らない。10:42-44ワカンを履く。今回はクラストを想定して何時ものワカンではなく、芦倉型を持参した。これなら爪が大きく頑丈なのでアイゼン替りにもなる。ひと登りで980m11:00-07、969m峰山頂に到着する。あいにくと杁差岳の絵展望はない。山頂から僅かに下った所は絶好の枯松山展望台となっていた。この先の鞍部には岩場があり雪庇が嫌らしくなっていたが、東斜面から巻けそうである。時間さえあれば、このコースから枯松山に登ることができる目処がついた。これまでの経験で疲れてからのスキー滑降は厳しいことを実感しているので、無理をせず引き返すこととした。ODDに無線でここから下山することを連絡する。
11:18-25スキーデポ地でスキーを履く。食事。あいかわらずスキーの具合は悪い。この先で隠れた雪庇の亀裂を踏み抜く。できるだけトレースを辿る。11:43-12:00、969m峰(県境分岐)、シールを剥がし、ワックスを塗り、スキーにカラビナをセットし5mテープで引きずりながら下降を開始する。登る時に確認した亀裂を二つ越え、12:08スキーを履いて滑降を始める。鞍部で再びスキーを引く、ピーク手前(ウサギダナイ?)でスキーを履き、12:32ピークを通過する。雪庇の上を快適に滑る。
12:39013:04左に789m峰、天候が回復してきて無風、ぽかぽか気分、ラーメンを煮、ノンアルコールビールで喉を潤す。ブナ林の滑降は楽しい。13:15鞍部から直接斜面をトラバースして、13:20に452m峰から来る尾根上に出る。快適な沢を下る。ウサギが二回飛び出して走り去る。沢の一箇所穴が開いており滝のようだ。ここは右岸から巻き、若干降った所で左岸の杉林に入る。13:30スキーを脱いで尾根上に出る。今冬始めて雪虫を見る。3月の雪山である。375m13:39スキーを履き広い尾根を下る。大渕の赤い橋がすぐ下に見える。細い尾根から左の杉林を抜けて、旧長者原キャンプ場に出る。290m13:50車道に出て梅花皮荘に向かう。岩場を見上げて、よくあんな所を登ったものだと我ながら呆れる。13:54車に到着。
長者原の越後屋前でLFDと一行と会う。小国町商工会婦人部主催の鍋祭りに参加し、今晩はここに泊まるのでローソクを立てる穴を掘っているとのことであった。帰宅後、スキーのビンディングを見ると、鉄の板が切断していた。

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