登山者情報839号

【2004年07月28日/石転ビ沢/井上邦彦調査】

石転ビ沢中ノ島(草付キ)上部の崩壊した岩塊の残骸を落としました。案の定、岩は中ノ島上部と横断部を直撃しました。これにより危険性は減少しました。しかし、全ての岩を落とすことはできませんでしたし、雪渓上で止まっている物もあります。従って、中ノ島中央部の水場から草付キノ広場手前までの間は、落石の可能性が高くなっています。この間で休憩は一切できませんし、常に上部を確認し落石から逃げる体制を維持することが必要です。
石転ビ沢入渓禁止は29日朝を持って解除しますが、初心者が落石を避けることは困難ですので、上級者以外の入渓は避けてください。また雪渓上は亀裂が縦横に走っています。雪渓の崩壊にも十分な注意が必要です。
以下、雪渓の状況と作業の概要を記載します。
05:30天狗平発、温身平でOTJと交信する。05:55砂防ダムを通過、山道に入る。06:38梶川出合を通過するが、手前の崩壊地に大岩が1個落ちそうになっている、落石注意。
06:57-07:03石転ビノ出合で大岩に赤ペンキで描かれていた矢印を消す。単独行者に追いつく。門内沢を渡渉し、続いて石転ビ沢を渡渉する。両沢とも飛び位置伝いに跳ねるが、荷物がある時はきついかもしれない。
07:14-22雪渓の末端で食事を取りスパイク靴に履き替える。ここには黄旗が立ててある。雪渓に取り付くが左岸(上流から見て左岸・右岸と言う)寄りの雪渓は亀裂が凄まじく近寄る気はしない。右岸枝沢付近は大きく露出している。慎重に右岸よりの雪渓から川原に降りる。眼前の雪渓は直立して聳ええいるので、枝沢を若干登り右岸から雪渓へ上がる。この上の雪渓は一見安定しているようだが、ホン石転ビ沢直下は亀裂が複雑に走っており恐ろしい。07:53ホン石転ビ沢対岸の枝沢に逃げたが、枝沢に上がる部分の雪渓が薄くなっており、コースを僅かでも読み違えれば大事故に直結するだろう。
ホン石転ビ沢出合を過ぎると、すぐ上に亀裂が横断している。右岸寄りも嫌らしい雰囲気があり、左岸寄りは末端が薄くなっている。北股沢出合にも亀裂が走っている。
08:18-27北股沢出合の清水、水源地まで登り冷たい水で喉を潤し食事を取る。ミヤマキンポウゲ・ヨツバシオガマ・モミジシオガマが咲いている。雪渓から高い位置となった黄旗を下に降ろす。
黒滝から夏道になるが、左岸の夏道に下りるポイントは早めに取ったほうがよい。今回はそのまま雪渓を詰めて岩の上に出たが、冷や汗が流れた。黒滝から上部は雪渓が崩壊していた。登りは雪塊の間を縫って中ノ島(草付キ)に直接取り次いだが、このコースはお勧めできない。黒滝からは夏道を辿り左岸から入る枝沢を越えて尾根に取り付き、大岩から小沢を渡って中ノ島(草付キ)に入るのが良い。
中ノ島(草付キ)下部はミヤマキンポウゲが盛りであった。08:45お勧めルートとの合流点でヘルメットを被る。左手(下から見て)の水場を過ぎると、いよいよ危険地帯となる。観察しながらも自然と速度が上がる。登山道のあちらこちらに落石跡の穴がある。登るにつれてその数も多くなる。これにかすったら腕や足はちぎれるだろうし、頭部なら即死であろう。上部の雪渓に向かっているOTJが見えた。無線で交信しながら、全速力で小沢を越え、沢状の登山道を登る。
追い抜いてきた登山者はまだ北股沢出合の下であり、他に登山者は見当たらない。OTJが浮石を落とし始める。岩は雪粉を舞い上げ、加速度をつけて雪渓を落ち、今ほど登ってきた登山道を直撃する。ある程度作業を終えたところで、再び登る。09:06草付の広場には融雪水が流れていた。ここから斜上しOTJの待つ崩壊地に向かう。除くと雪渓はまっすぐに小沢の横断道に落ち込んでいる。2人がかりで岩を落とすが、なかなか動かない。巻き込まれないように慎重に落とす。岩は始めゆっくり、次第に加速度を付けて、高さ2m距離8mほども飛び跳ねて中ノ島(草付キ)を直撃し岩に当たって分裂して見えなくなった。最後に残った大ものは雪渓に食い込んでいたので、ピッケルで削り雪渓の間に移動させた。その後、若干下って残った岩屑を落としたが、全ては処理しきれない。また雪渓の途中で止まっている石も見受けられた。
落石作業を終え、09:39-10:41梅花皮小屋で休憩。下降すると登山道の落石跡が一段と増えていた。大岩から左の小沢を横断し、お勧めルートを下る。小屋から黒滝までは全て夏道である。11:09北股沢出合でヘルメットを脱ぐ。あとは北股沢出合亀裂の狭い部分を跨ぎ、11:23亀裂を越え、11:26ホン石転ビ沢出合通過、11:28絡みあった亀裂を飛び、11:30亀裂を越える。
11:45-52雪渓末端で靴を換え、12:02石転ビノ出合、12:22梶川出合を通過する。12:44-13:09大雨で詰まっていたうまい水の塩ビ管を直す。13:54天狗平着。

ルート全体図 ポイントは雪渓末端
北股沢から黒滝上で中ノ島とお勧めコースに分かれる。その後に
合流して中ノ島を登り、トラバースして直登。草付の広場で分れ左
突端が落石発生地。

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